
9月25日早朝、愛知県豊橋市の郊外に位置する老舗暴力団・平井一家の本部は、尋常ではない緊張感に包まれていました。
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厳戒態勢の中、全国の警察が警戒
午前7時ごろから、平井一家本部前には数人の捜査員が配備され、時間は経過するにつれてその人数は増大。7時半過ぎには約20人に達しました。地元愛知県警に加え、北海道、千葉、茨城、兵庫など全国各地の県警から捜査員が集結。さらに大勢の報道陣が周囲を取り囲み、現場は異様な雰囲気に包まれました。
弘道会トップが到着、緊張はピークに
高い外壁に囲まれ、外部から内部をうかがい知れない本部でしたが、午前10時前、突如シャッターが開きます。玄関前には袴姿の男たちが整然と並び立つ中、護衛車に先導された黒塗りの高級車が現れ、緊張感はピークに達しました。車から降り立ったのは、国内有数の巨大暴力団弘道会のトップ、竹内照明総裁(65)です。
この日、平井一家で行われていたのは、弘道会会長の「継承盃」でした。
弘道会は9月8日に人事を発表し、それまで会長を務めていた竹内氏(六代目山口組若頭を兼任)が総裁に就き、野内正博若頭が会長に就任したばかり。六代目山口組の中核組織である弘道会が、同じく六代目山口組の二次団体である平井一家を会場として使用したと見られています。
弘道会は、六代目山口組の司忍組長(83)や髙山清司相談役(78)を輩出した名門。そのトップ人事は、六代目山口組のみならず、暴力団社会全体に大きな影響を与えるため、当局もその重大性を理解しており、警備にあたる捜査員は午前11時過ぎには40人にまで増員されました。
盃事を終え、新会長に安堵の笑顔
竹内総裁が本部に入ってから1時間半後、再びシャッターが開きます。送迎車に乗り込む竹内総裁と、それを見送る野内新会長の姿が確認されました。その後、竹内総裁は護衛車に先導されて帰路に就き、盃事を無事に終えた野内会長には安堵の笑顔が見られたといいます。
新体制が示唆する六代目山口組の未来
この人事は、暴力団事情に詳しい関係者から「司組長、髙山相談役のイズムを継承する動き」と評価されています。
通常、六代目山口組の人事は秋から12月にかけて決定されますが、8月に臨時執行部会を開催するなど、組織は新体制の構築を急いでいる様子。これは、神戸山口組との「分裂抗争」が10年を迎えるのを前に、組織運営を確固たるものにする強い意思の表れとみられています。
現在、六代目山口組の執行部メンバーで分裂時から残っているのは、竹内氏と森尾卯太男舎弟頭の2人のみ。組織内で若返りと竹内氏を中心とした改革が進行する中で、中核組織である弘道会のトップ人事は、今後の山口組全体の行方を占う上で極めて重要です。
今回の継承盃は、司組長―髙山前若頭―竹内若頭と続く「弘道会の系譜」を、野内新会長へとつなぐ布石が打たれた形であり、名門組織が迎えたこの節目は、暴力団社会に大きな影響を与えると予想されています。