10代の小中学生を中心に、いま爆発的な人気を集めている玩具「スクイーズ」。低反発でムニッとした独特の触り心地が特徴で、スイーツやフルーツを模した可愛らしい見た目から、癒やしグッズとして大流行しています。
しかし今、TikTokなどのSNSでは「#スクイーズ依存症」を自称する投稿が相次ぎ、注目を集めています。「たかがおもちゃ」と侮るなかれ。スクイーズに依存するあまり、生活に支障をきたす大人も増えているのです。
今回は、実際にスクイーズの買いすぎで生活が破綻しかけたという20代女性の体験談とともに、精神科医が解説する「浪費依存」のメカニズムと対処法を紹介します。
目 次
1. 「月の支払いが給与超え…」20代女性が告白するスクイーズ依存のリアル
昨年末からスクイーズの魅力に取り憑かれ、わずか数ヶ月で300個以上をコレクションするようになった、にょろさん(仮名・20代女性)。彼女は現在、TikTokで自身の“スクイーズ依存症”からの克服記録を発信しています。
始まりはTikTokの「ASMR動画」
もともとスライムなどの不思議な感触のおもちゃが好きだったというにょろさん。ハマったきっかけは、SNSのアルゴリズムでした。
「TikTokで食べ物の咀嚼音や、石鹸を削る音といったASMR動画(視覚や聴覚への刺激で心地よさを誘う動画)をよく見ていたんです。その流れで、たまたまスクイーズの紹介動画が流れてきて、ムニッとした柔らかそうな質感に惹かれて購入したのが始まりでした」
クレカの支払いが8割スクイーズに…リボ払いで危機感
最初は軽い気持ちで購入していたにょろさんですが、徐々にその行動はエスカレートしていきます。
「ハマってからは、ほぼ毎日新しいスクイーズをネットで探して購入するようになりました。月の購入額が10万円を超えることも珍しくなくなり、直近ではクレジットカードの請求額の約8割がスクイーズ代に。ついに月給を上回ってしまったんです」
貯金が底をつき、支払いをリボ払いに変更した時、初めて「自分の生活がスクイーズに支配されている」と恐怖を感じたといいます。「このままだと破産する」という金銭的な危機感から、彼女は依存からの脱却を決意しました。
2. なぜここまでハマる?消費者を狂わせる「販売手法」の罠
生活を脅かすほど、にょろさんがスクイーズにのめり込んでしまった背景には、スクイーズ特有のトレンドの早さと、メーカー側の巧妙な販売戦略がありました。
① 新作リリースのサイクルが早すぎる
スクイーズはトレンドの移り変わりが非常に激しい玩具です。その時々で流行する新しい感触の商品が、様々なショップから次々と発売されるため、「新作が出るたびに気になってネットに張り付いてしまう」という中毒性を生み出しています。
② TikTokでの「実演ライブ配信」による購買意欲の刺激
現在、スクイーズは中国のメーカーやショップが主流となっています。販売スタッフがTikTokなどでほぼ毎日、実演販売のライブ配信を行っているのです。
「休日は配信を見るために家に引きこもるほどでした。配信の中で『今しか買えない限定品!』などと言われると、どうしても物欲を我慢できなくなってしまうんです」
3. 精神科医が解説「スクイーズ依存症」の正体は“浪費依存”
おもちゃの購入に歯止めが利かなくなる現象について、依存症治療に詳しい昭和医科大学烏山病院精神科の常岡俊昭准教授に話を伺いました。
スクイーズ依存=精神医学的には「浪費依存」の一種
常岡准教授によると、精神医学の定義に「スクイーズ依存症」という病名はありません。これは「浪費依存」と呼ばれる行動の依存に分類されます。
「浪費依存とは、辛い出来事やストレスがあった際、一時的にそのネガティブな感情を和らげてくれるものに対して、過度にお金を費やしてしまう状態を指します」
誰もが陥る可能性がある「耐性」の恐怖
仕事終わりに「ビールを1杯飲んでスカッとしたい」と思う行動も、これと同様の心のメカニズムです。しかし、人間の脳は刺激に徐々に慣れてしまう(耐性がつく)性質があります。
最初は1個のスクイーズで満たされていた癒やしが、次第に物足りなくなり、購入量や金額が膨れ上がっていきます。にょろさんも「仕事でイライラした時や、お腹が空いた時に衝動買いしてしまう」と語っており、日常のストレス緩和の手段がスクイーズの購入にすり替わっていたことが分かります。
4. 依存行動をエスカレートさせないための「ストレス発散法」
日常のストレスから、特定のモノや行動に依存してしまうリスクは誰にでもあります。依存を未然に防ぎ、上手に付き合うためにはどうすればよいのでしょうか。
対策:ストレス発散の「引き出し」を複数持つ
常岡准教授は、スクイーズをはじめとする癒やしグッズ自体が悪いわけではないと強調します。
「問題なのは、『あるひとつの方法でしかストレスを発散できない』という状態に陥ることです。これが依存症への第一歩になってしまいます。大切なのは、自分のストレスを和らげる選択肢を複数持っておくことです」
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友人と外出して話す
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ランニングやウォーキングなどの軽い運動をする
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別の趣味の時間を作る
このように、自分にとって心地よいと感じる別の発散法を実践することが、依存症を回避する防壁になります。
また、もし「自分の力では購入をコントロールできない」という本格的な依存状態に陥ってしまった場合は、同じ悩みを抱える人が集まる自助グループへの参加や、専門の医療機関(精神科・心療内科)への相談が極めて有効です。
まとめ:癒やしが毒に変わる前に
SNSを中心にブームが加熱するスクイーズ。その手軽な癒やしの裏には、一歩間違えると生活を圧迫しかねない「依存」の罠が潜んでいます。
お買い物が単なる「ストレス発散の浪費」になっていないか、時折自分の買い物の傾向や、クレカの明細を客観的にチェックする習慣を持つことが大切です。







